2011年10月30日日曜日

校長会という組織

 「校長は何をしている人?」




 吉田新一郎さんの「校長先生という仕事」においてこのような投げかけがありますが、大方の回答は「デスクワーク」「会議」「出張」「校内巡視」「情報発信」などでしょう。



 その校長が自主的に組織している団体が「校長会」であるが、一体どのような活動をしているのでしょうか。アメリカの校長会のホームページを見てみると、「指導法に関する最新の情報」「学校経営に関する情報」などが満載されています。ここでは、校長という仕事を続けていく上で、大変有益な情報を手に入れることができます。



 これに対するに、わが国の校長会はどうでしょうか。




 これは私見ですが、「組織を維持することが目的となってしまった団体」と言ったら言いすぎでしょうか。


 さらに付け加えれば、「教員という仕事」の上がりのポストが校長であると認識されている人もいるのではないかと思われます。残念ながら、この考え方が通用したのはすでに遠い昔のことです。校長という仕事は一般教員の仕事の延長線上にはありません。



「地域とともにある学校」という理念が当たり前になった今日、「経営理念」は不可欠のものとなっています。ところが、この人材養成がかなり遅れているのが、今日の教育界だと思われます。


 教育委員会もこの点を自覚しているので、ようやく人材育成に取り掛かりつつあります。


 ただ、そのノウハウをどのくらい持っているのでしょうか。


 また、ただ単に企業の人材育成の手法を持ち込んで成功するのでしょうか。


 この点は、大いに欧米の教育界の手法を学ぶべきであると私は考えています。



(メルマガの続き)





 民間企業のマネジメントは大いに参考にすべきと思います。特に学校のマネジメントで気をつけるべきところは、「授業の質」を上げることを最優先にすることです。企業で言えば、顧客サービスでしょうが、それを学校では「授業の質」「個々の学びの質」と捉えてはどうでしょうか。
 「授業の質」を上げるために何をすべきか、これが発想の原点でなくてはならないと思います。この目標を達成するためには、それを担う教師自身が学び続けられることが重要です。もし、それが何らかの理由で妨げられているとすれば、そこは改善しなければなりません。
 「放課後が忙しくて研修などしていられない」「自分が学ぶ余裕などない」という現場の声はたくさんあると思います。だとすれば、「時間の確保」「研修の機会の確保」を何とかしなければなりません。これを解決するには、管理職の知恵と実行力が必要です。
 たとえば、「時間の確保」のためには、一週間の平日のうち、1日は必ず「部活動休みの日」を作ることが考えられます。これによって、放課後のある程度の時間は、余裕の時間を持てることになります。これを教科部会の形でミニ研修会にすることもできるでしょうし、ネットによって最新の教育情報に接する時間にすることもできます。また、同学年の同僚と最近の授業実践について語り合うのもよいと思います。
 また、このような形でなくても、自分の空いている少しの時間を利用して、パソコンの校内ネットワークを利用して、数人でメールのやり取りで読書会もできます。
 さらに、会議の削減や実施方法の見直しなども工夫の余地があるのではないでしょうか。
 一堂に会する会議には、それなりの意味があるのだと思います。その意味を理解して会議を開くのとそうでないのとでは大きな違いがあるでしょう。吉田さんもその著書の中で次のように指摘されています。
「会議の場での教師の学びと、各クラスにおける教師の授業とは、密接につながっています」(吉田新一郎「効果10倍の<学び>の技法」PHP新書・p.64-66)。
 
 また、このような「学びを優先する学校」を作るには、校長自身が「学びの先頭」に立つ必要があります。校長が月に1冊も本を読まずに、いくら「学びが大切です」と言ってもだれが信じるでしょうか。校内の若手・中堅の職員に対して、「お薦めの本」をアドバイスすることも大切だと思います。生徒に対しても同様です。私は週に1回必ず、昼休みに学校図書館に顔を出すことにしています。そこで、本を手にとってどの本を借りようかと迷っている生徒に声をかけたりしています。学校全体で読書を大切にする雰囲気を作ることも「学びの共同体づくり」のための校長の役割ですね。

2011年10月23日日曜日

実は、学校の問題は他にも...

第1号では9つの問題を紹介しましたが、実はリストアップしていたのは他にもありました。ちょっと多すぎるかな/最初から全部を書いたらシンドイかな、と思って遠慮しました。(あのリストだけでも十分すぎるぐらいに深刻ですから。)しかし、以下の3つも学校や授業をよくしていくためには欠かせない重要な要因/問題です。

10) 子どもの学びに関して家庭や地域との協力関係が築けていない
11) 1~10すべてに関する多くの「悪い習慣」や妥協および決定的な情報不足
12) 学校(や授業や教育システム)をさらによくしていこうという意識とアクションの欠如

 11番目はまさに、第1号のコメントとしてトミーさんが、
 「世の中ではこれほど変化に対応する力などと言われているのに
  その根本の学校がそれをおろそかにしています
  または
  わたしたちは永久に変わらない価値を持たなければならないと盲信しています」
と書いてくれていることと大いに関係します。

 国際理解教育や環境教育等をしていた30年前から思っていることなのですが、こと教育に関する英語と日本語の情報ギャップは、100対1か2のレベルです。日本の先生たちや教育関係者は、そんな中でがんばり続けているわけです。しかし、一方で情報を提供する立場にいる人たち(大学の研究者や出版社や文科省?)の怠慢ぶりは目に余るものがあります。1か2が、5や10になるだけでも、ましてや20、30になったらすごいことになることが約束されているのですから。その過程では、たくさんの「悪い習慣」や妥協も明るみになることでしょう。

★ あなたが気づいている/抱えている問題が12個以外にあったら、ぜひ教えてください。

 これらの諸問題に対して、sunflowerさんは自分がやれる/やりたいと心底思うことを、アクションに移し始めていると紹介してくれています。

★ あなたが気づいた対処法、効果的だと思う対処法、起こしたアクションも、ぜひ教えてください。


<以下、メルマガの続き>


 学校は「自分たちがよくしていくところ」ではなくて、「上の誰かが指示して修正してくれる、それを待っているところ」という感覚がまん延しています。しかし、これまでの歴史を振り返ってみても、その誰かがよくしてくれたためしは数えるほどもありません。

 先生方や学校や教育委員会は「忙しい」というかもしれません。実際に、忙しすぎますから。しかし、それが意味のある忙しさかというと、どうもそうは思われません。肝心なところに時間が掛けられず、そうでないところに必要もない時間を割かないといけない忙しさが学校にまん延しています。その理由は、ビジョンのないことです。ビジョンがないと振り回され続けます。優先順位がありませんから。白鳥さんが、このブログの9月11日に書いてくれていたように

 私がビジョンの大切さに気づかされたのは、1991年に読んだピーター・ドラッカーの『非営利組織の経営』という本でした。その中に、「ビジョンのない非営利組織は消えた方がいい」と書いてあったのです。学校は、その非営利組織の一つです。(そうなんです!大切なのは各学校レベルのビジョンです。間違っても教育委員会や文科省レベルではありません。それらは、ほとんど役立つことはありませんから。もちろん、教室レベルというか教師レベルのビジョンは大切です。学校や学年レベルで取り組むことは難しくても、個人レベルで取り組めることは際限なくあり得ますから。)
 残念ながら、その本の中ではビジョンのつくり方までは書いてありませんでした。そこで、ビジョンのつくり方が書いてある本を5年間探し続けて、見つけたのがクリスト・ノーデン-パワーズの『エンパワーメントの鍵』でした(訳して日本で出版するまでにさらに4年もかかってしまいましたが)。組織を元気づけたいと思っている人には必読の書です。「エンパワーする」とは「元気づける/活性化する」という意味です。24時間の物語として書いてあるので、とても読みやすいです。さらには、sunflowerさんが紹介してくれたアプローチ(=「変化の担い手」)そのものとも言えます。

対処法を示した本:
10) いい学校や授業のつくり方について書いた『いい学校の選び方』中公新書
  『効果10倍の学びの技法』PHP新書
  『ペアレント・プロジェクト』ジェイムズ・ボパット著、新評論
11) これまで私が書いたり、訳したりした本は、すべてこれを何とかしようと思ってのことでした。(それは、授業や学校改善に関心を持ち始める前のERIC時代及びその準備期間の1980年代の半ばから始まっていました。)
12) これはひとえにあなたのアクションにかかっています。
  『エンパワーメントの鍵』クリスト・ノーデン-パワーズ著、実務教育出版(品切れ)

2011年10月16日日曜日

職場感情について

前回の最後に、次の文章を紹介しました。


 「こうしたチームを機能させる際に大切なことは、お互いを大切にし合う文化というか習慣を学校に根づかせることで、これこそが校長のもっとも大切な役割の一つといえる。」(吉田新一郎「校長先生という仕事」平凡社新書p.183




 このような組織を作るためにまず校長がやることは、実態の把握です。


 要は「働きやすい職場」を作ることが企業と同様に求められているわけです。


 この点で参考になるのが、「職場は感情で変わる」(高橋克徳・講談社新書2009) 


です。この本の中で著者の高橋さんは次のように述べています。


組織にも感情がある。そう思ったことはないでしょうか。組織は人間ではないし、生物学的な意味での感情というものを持っているわけではありません。でも、組織自体が何か"ある種の感情"を持っているかのように感じたことはないでしょうか。たとえば、職場で見られる具体的な"感情"には、以下のようなパターンがあります。


・皆、元気がなくて、職場全体が暗くなっている。
・お互いにイライラして、攻撃的になっている。

・皆が保守的になっていて、殻に閉じこもっている感じがする。

・皆、イキイキとしていて、新しいことに取り組もうという活気がある。

・お互いを尊重しあい、助け合おうという温かい雰囲気がある。」



 「攻撃的な職場」において私も働いた経験があります。これは精神的にかなりきついですね。


 また、逆に「ぬるま湯的で」お互いに「馴れ合いの関係」になっている職場。確かに、気持ちは楽なのですが、これも人としての進歩がありません。


 そんな関係を、高橋さんはに4つに分類しました。(同書,p.18


・ギスギス感情  ・冷え冷え感情 


・あたたか感情  ・イキイキ感情  


 これは職場の実態を分類するときにとても役に立つと思います。


 「あたたかい」職場が行き過ぎると、「ぬるま湯」になります。


 また、一見すると一番よい「イキイキ感情」が行き過ぎると、その中の成員の一部が「燃え尽き感情」をもつようになってしまいます。


 校長は、職員との日常のコミュニケーションから自校がどのような「感情」に支配されているかをまず知ることが大切だと思います。そして、マイナス感情に支配されているときは、その原因を突き止めて、対処することが求められるでしょう。


 かつて勤務したある学校は、「ぬるま湯感情」に支配されていました。そこで、「あたたかさ」は残しつつも、「ピリッとした相互批判」のある人間関係を作り出すために校内研究会において、「批判的な友だち」という手法を持ち込んで自由にお互いの意見が言える関係を作るようにしてみました。(「批判的な友だち」については、たとえば「効果10倍の<学び>の技法」吉田新一郎・岩瀬直樹,PHP新書p.23を参照してください。)


 これによって次第に「ぬるま湯」状態が改善されていきました。


また、校長自身の人間性も重要な要素です。職員には厳しく言っても、自分自身の勤務態度や日ごろの行動がいい加減ではだれもついてこないでしょう。




 さて、「働きやすい職場」になっただけでは十分ではありません。


 次は、校長のリーダーシップです。これについても若干誤解している方がいるように思います。「リーダーシップ」というと、辣腕のリーダーが部下をぐいぐい引っ張っていくという典型的なイメージがありますが、それだけではないと思います。


企業経営では、「双方向性のリーダーシップ」が注目されているようですが、参考になると思います。(「ラーニング・リーダーシップ入門」牛尾奈緒美他・日本経済新聞出版社)部下が管理職からの一方的な指示で動くだけでなく、部下からの意見や提案も管理職に直接届くような「双方向性」が特徴です。学校は、何と言っても「学びの実現」が主たる目標ですから、校長が「学びを大切にする姿勢」を見せることが、リーダーシップの第一歩であると考えます。つまり、「学びのリーダーとしての校長」です。




「校長は自分が大切にしていることを、絶えずメッセージとして発信し続ける役割も担っています。まさに、動く広告塔でなければなりません。」(「効果10倍の<学び>の技法・吉田新一郎・PHP新書p.58




 つまり、「校長のリーダーシップ」は「自分が大切にしていること」を部下職員、児童生徒に対して、いつでもPRすることからスタートします。この姿勢が学校全体に影響するのだと思います。


 次に、先ほどの「双方向性」の考え方も含めて風通しのよい職場にするために、校長は部下職員とのコミュニケーションを大切にして、よりよい人間関係づくりに努めることが求められます。


 さらに、日々の仕事の中では、部下職員に対して、優先順位を明らかにしておくことが必要です。限られた時間と人材で、年々増加する事務量をこなしつつ、子どもたちへの指導にもあたるわけですから、「優先順位」の提示は大切です。私は年度始めに、たとえば諸計画の中で、これとこれは重要視するとはっきり宣言することにしています。それ以外は、計画がないのは困りますが、書類として揃っていれば「良し」とするということです。


この点をはっきりさせれば、職員は安心して仕事を重点化させられます。


 また、校務分掌の職務遂行にあたって、多くの教員は自分で考えて自主的に進められるか、少しアドバイスをすれば支障なく仕事ができる人がほとんどです。しかし、中には注意して見ていないと、うまく仕事を進められない人がいます。このタイプは放って置くと必ず大きな問題になります。ここは丁寧に助言や支援をしていくことが求められる場面です。この見極めが学校経営のポイントの一つと言ってもいいでしょう。


 最後に、学校は本来とても創造的な場であると思います。ところが、現実にはなかなかそのようにはなっていません。この「創造性」を引き出すには、「職場内で自由に発言できる雰囲気」が重要です。この自由な雰囲気をかもし出すのは学びのリーダーである校長の責任です。特に中学校、高校は概して、良くも悪くも個性的な教員が多いと感じます。その「個性」を生かせるかどうか、この点も校長という仕事の面白さであると思います。


 

2011年10月9日日曜日

Professional Learning Community について


 私(白鳥)がこのPLCという言葉に出会ったのは、2006年のアメリカ・ジョージア州でした。そのstudy tripで、郡の教育委員会、小中高校を見学させてもらいましたが、その行く先々でこの言葉に出会いました。


 それ以前に、吉田さんの著書の中で紹介されていた本の1冊に「Professional Learning Community at Work」(R.DuFour & R.Eaker)がありました。


この本の至るところに学校改善につながるヒントが散りばめられているのですが、特に第10章「Teaching in a Professional Learning Community」の要約の部分がお薦めです。


教員認定・評価にかかわる団体が「プロの教師として認められる条件」として次の項目を紹介しています。



教えることよりも、学ぶことを重視している


意味のある学習内容に子どもが主体的にかかわっていくようなカリキュラムや指導法をデザインする


カリキュラムや評価法を改善していくために、子どもたちのすることや作り出すものに焦点を当てる


学校規模の問題と同様に教室での指導や学びについて同僚と協力している


自分が教えることから学んでいて、教育研究の成果も使いこなしている  など


・・・・・        (参考: 『校長先生という仕事』193〜194ページ)



 私の教員経験からすると、「教えることよりも学ぶことを重視する」ことは難しいことだという実感があります。教員になって5年もすれば、一通りのことはこなせる状態になっています。「教える」ことには慣れてきても、自分自身が「学び続ける」ことは難しいことです。なぜなら、そんな苦労はしなくても、「教える授業」はできてしまうからです。


 ただそんな授業が受け入れられる学校ばかりではありません。中学校では、当然のように生徒の実態を無視した「教える授業」を押し付けている学校は、間違いなく「荒れた学校」になります。私も以前指導主事をしていたときに、「荒れた学校」の授業を参観した経験があります。そのときの授業は、まさに「これでは生徒が荒れるのも無理はない」という、生徒にとって魅力のない授業ばかりでした。


 その後、その学校も「教えることよりも学ぶことを重視する」教員が増えたので、「生徒にとって魅力のある授業」が増えました。もちろん、それだけで学校がよくなったわけではありませんが、教職員が「学び続けること」の大切さをしみじみと感じました。


 また、2番目に掲げられている「意味のある学習内容」は、カリキュラムづくりの大切さを意識する項目です。アメリカの教育学者であるキャサリン・ルイスさんがその研究の中で指摘しているように、日本の教員は「カリキュラムづくり」に関しては概して意識が低いという事実があります。(出典;Lewis,Catherine C,Lesson Study:A Handbook of


Teacher-Led Instructional Change Research for Better Schools,2002


 それは、ナショナル・スタンダードとして「学習指導要領」があり、さらに教科書会社の作成した計画・指導内容の詳細なプランが用意されているという事情があるので、特に工夫しなくてもそれらを利用すれば一応授業はできてしまうということがあると思います。


 それに対して、アメリカの場合は連邦や州の履修基準はあっても、具体的な授業はその学校に任されており、現場の教師は日々の授業の内容を工夫することに熱心だということです。


 ただ、今の子どもたちの持っている情報量は昔の子どものそれとは比較にならないほど多いと思います。それを前提にした上で、その知識を再構築する(いわゆる構成主義の考え方)ことが求められていると思います。それには、「意味のある学習内容」をどのようにして作り上げていけばよいか、ここがポイントです。


 そのためには、やはり「教師が学び続ける学校」をどうやって作り出し、維持していくかが重要です。この目標を達成するには、いろいろな方法が考えられますが、まず手を付けるところは「校内研修」です。



  


(以下、メルマガの続き)



「校内研修」というとだれもがすぐに頭に浮かぶのは、「研究授業 / 授業研究」です。ただ、ここではそれについては触れません。



それでは、どのように研修を進めればいいのでしょうか。



具体的には、以下のようなやり方を考えました。



【具体的な手法】


1 研修形態   2~8人程度までのグループ


        この人数だと「学年教師集団」が最適かもしれな 


        い。学年主任又はそれに代わるリーダーがその学 


        年の中心になることも考えられる。


        年度初めと終わりに全体での研修会をもつ。


        (オープニングとクロージングのワークショップ)



2 活動内容  ・読書会   ・メーリングリスト


        ・メンタリング・ケーススタディ


        ・ジャーナル ・アクションリサーチ


        ・相互授業参観・他校訪問  などから選択



3 進め方   ・自己研修計画に基づいて進める


        ・年3回の定期面談の際に進捗状況を管理職が確認 


         する


        ・年度末に自己評価を行う(できればA4・1枚程度 


         に研修報告をまとめて、提出する。係りはそれ 


         をまとめて印刷して、全員に配布する)



1~2は現在私の勤務校で進行中ですが、3はまだプランのみです。


もっとも、「研究授業/授業研究」が皆無ではなく、若手教員のために学校全体で年2回の全体研修の機会は作りました。


「こんなやり方で本当に大丈夫なのか」と疑問をお持ちになる方も多いと思いますが、前任校での経験をもとに、あえてこのような手法に挑戦することにしました。


学校「全体」という形にこだわるよりも、「学びの内容」で勝負するということでしょうか。


全国どこでも同じでしょうが、年々放課後のゆとりの時間がなくなっています。


また、放課後に研修をしていられる中学校ばかりではありません。生徒指導で走り回る忙しさの中で、学校全体の「研修」がいくら建前としては必要だと思っても、それを前面に出しにくい中学校もあります。


そうした状況下にあって、「全体」よりも「部分」での研修を活性化させるほうが、現実に即した合理的なやり方だと思います。


 吉田さんの著書「校長先生という仕事」のp.183にこういう件があります。


 


 「信頼・協力関係は、何も教職員が一丸となって築く必要はないのである。信頼・協力関係に不可欠な「自分の言いたいことが言える」ことや「自分をさらけ出す」ことを可能にしてくれる二名から数名のチームで、いろいろなプロジェクトや活動に取り組む方がいい。」



 この文章に初めて接したのが、ちょうど校内研修のあり方について悩んでいたときでしたから、まさに「これだ」という気持ちになった覚えがあります。



 それまでは、「研究授業/授業研究」路線しか知りませんでしたので、その取組だけでずっとやってきました。もちろん「研究授業/授業研究」の意味は十分に理解できるのですが、それだけでいいのかというのが私の偽らざる思いです。



チームによる学びあいが校内で日常的に行われることが私の学校経営の目標です。さきほどの吉田さんの文章には続きがあります。



「こうしたチームを機能させる際に大切なことは、お互いを大切にし合う文化というか習慣を学校に根付かせることで、これこそが校長のもっとも大切な役割の一つといえる。」



このような文化を組織に根づかせるために「校長は何をすべきか」については次回触れたいと思います。


 



2011年10月2日日曜日

第1号です

「PLC便り」の第1号をお送りします。
 PLCは、Professional Learning Community(プロの教師集団として学び続けるコミュニティとしての学校)の略です。それこそが、授業改善や学校改善のカギということで名づけました。

 この「学校改善」「教師こそが学び続ける学校づくり」をテーマにしたメール・マガジンを発信するに当たって、若干の経緯を書きます。
 私(吉田新)がこのテーマに関心を持ち始めたのは、1990年代の半ばです。
 それまで、1980年の半ばから約10年間、教員研修に関わりました。校内研修や教育センターや教育委員会主催の研修会に講師として招かれて行きました。
 最初のうちは、ワークショップ形式(参加型)の研修を体験してもらうことに夢中で気がつかなかったのですが、徐々に以下のようなことに気づき始めたのです。

① 圧倒的多数の先生たちは、教科書をカバーする授業はできても、子どもたちが主体的に学ぶ授業はできない。
② 研修がイベントとして行われており、授業を改善するものにはなっていない。(それは、校内研修も、センター研修等も同じです。)
③ 教育委員会レベルで研修を担当している指導主事の方々に「研修に関する情報は、どこから得ていますか?」と質問したところ、「そんなのがあったらぜひ教えてください」という答えが戻ってきた。誰も研修を効果的に行うための情報をもたずに、事業をこなしている。対象を受講者個人レベルに設定しているので、聞いたことを活かすも活かさないも、各人に委ねられている。つまり、「研修が終わった時が、すべての終わり。」
④ 校内研修の柱である研究授業と研究協議の進め方にも疑問を感じた。これで、授業が改善するのか、と。この方法が効果的であることは証明もされていないにもかかわらず、習慣だからという理由だけで続けられている。
⑤ 学校が組織の体をなしていない。(それが言いすぎなら、少なくとも「学び続ける組織」としての体はなしていない。)
⑥ 出会った校長たちのほとんどが、自分の役割をしっかり認識していない。学校をよくしていく方法をもっていない。
⑦ 評価のことを理解し、実践している人がとても少ない。テストは、評価と言わないほうがいいぐらい!!
⑧ 教育行政は、管理することや効果が検証されていない新事業を実施することに忙しく、学校や教師をサポートするという捉え方が極めて希薄。そして、
⑨ 教員養成課程(大学)が抱えるたくさんの大きな問題
など。

 国際理解教育、環境教育、異文化理解教育、人権教育等を普及していた私は、以上のようにたくさんの課題に気づいてしまったので、暢気に国際理解教育等の普及や参加型の研修をしているわけにはいかなくなってしまいました。

 これらの大きな課題についての改善方法を提供していくことが本メルマガの目的です。


 <以下、メルマガの続き>


 ①~⑧の問題については、1995年以降情報収集をはじめ、2000年以降

① 『効果10倍の教える技術 ~ 授業から企業研修まで』PHP新書
  『ワールド・スタディーズ』はじめ私が国際理解教育センターから出した出版物
  『マルチ能力が育む子どもの生きる力』小学館
  『「考える力」はこうしてつける』新評論
  『ライティング・ワークショップ』新評論
  『作家の時間』新評論
  『リーディング・ワークショップ』新評論
  『「読む力」はこうしてつける』新評論
  『会議の技法』中公新書 ~ 参加者が主役の会議や研修は、構造的に授業と同じ!
②と③ 『「学び」で組織は成長する』光文社新書
    『効果10倍の教える技術 ~ 授業から企業研修まで』PHP新書
④ 『「学び」で組織は成長する』光文社新書
⑤と⑥ 『校長先生という仕事』平凡社新書
    『効果10倍の学びの技法 ~ シンプルな方法で学校が変わる』PHP新書
    いい学校のつくり方が書いてある『いい学校の選び方』中公新書
⑦ 『テストだけでは測れない! ~ 人を伸ばす評価とは』NHK生活人新書 ~ 子どもの評価、人事評価、学校評価の構造は、すべて同じ!!
⑧ このテーマはマーケットがないので、『校長先生という仕事』の最後に少し情報提供しただけです。
⑨ ここを改めないと、現場レベルでの尻拭いが続くので何とかしたいですし、情報は結構集めていますが・・・

などを書くことで、集めた情報のかなりの部分はすでに紹介しています。

 しかし、私が本を書いたぐらいで問題が解決するような次元の問題ではありません。いずれも、極めて根深い問題ばかりです。

 そこで、2006年に「学校改善」「教師こそが学び続ける学校づくり」「授業改善」のテーマで、アメリカのジョージア州を一緒に訪ねた現職公立中学校校長の白鳥信義さんと二人で数年の準備期間を経て、このメルマガを出し、継続的に情報提供をしていくことにしました。それぞれ違う視点からの情報提供にご期待ください。

 なお、ご希望、疑問・質問、感想、実践紹介、各種情報提供、テーマに関するお勧めの本の紹介等は、下のコメント欄を使っていただくか、あるいはpro.workshop●gmail.comに直接お送りください。必ず反応/フィードバックします。