2012年8月19日日曜日

「大切な友だち」



 これまでも何回か、「問いかけ」の大切さについて触れてきました。
 リーダーにとって欠かせない能力の一つです。
 コミュニケーションの要素を含めた、この「問いかけ」はひょっとしたら一番大切かもしれないぐらいです。

 その具体的な方法を今回は紹介します。
 「大切な友だち」というきわめてシンプルな方法です。

 これは、部下から個別に相談★を受けた時や、会議や、授業研究などの研修の場など、ほとんどの場で活用できる極めて効果的なコミュニケーションの方法です。もちろん、教師にとっては、教室での子どもとのコミュニケーションや同僚とのコミュニケーション、親にとっても子どもとのコミュニケーションで使えることは言うまでもありません。
 使い始めると、関係性や雰囲気、そして実際にアクションとして起こり始めることが、変わり始めます。

     まずは、相手の話をよく聴きます。(②~④のことができるように聴きます。)
     聴いていて、わからなかったところや不確かな点を質問します。
     よかった点は、できるだけたくさん指摘します。
     まずい/改善が必要だと思ったところは、それを質問の形に変えて尋ねます。
     最後は、愛を込めたメッセージをおくります。

順番に解説します。


   <以下は、メルマガからの続き>

① ②~④が聴いた後にできるように聴くのと、単に聞くのでは、聞き方がまったく違います。(後で、読んだ本について紹介するのと、単に楽しむだけの、違いのようなものです。)

② わからないところ/不確かなところをそのままにしておいて、誤って③や④を想像でしてしまっては、失礼です。そういうことをなくすためにも、質問します。
 慣れないうちは、この段階で④をやりはじめてしまう人が少なくありません。会議や授業研究の後の研究協議などでは、それが目立ちます。そういう習慣にドップリ浸りきっていますから。それも質問の形ならましですが、早速アドバイスを始める人がいますから、困ります。単純明快な質問をします。もちろん、④の段階の内容は、たとえ質問でも、この段階でしてはまずいのですが。

③ いい点は、どんな些細なことでも指摘されたら、誰でも嬉しいものです。でも、お世辞レベルのものは、すぐに見抜かれてしまいますから、やめておいた方がいいです。人間関係を悪くしかねませんから。心底いいと思ったことだけにしてください。
いい点を指摘するのは、次の段階の準備でもあります。これなしで、④にはいるのと、この後に④をするのとでは、雲泥の差があります。話や発表をした人が、④の段階を受け入れられやすくする役割が③にはあるのです。少なくとも、一つ、二つ、三つは言ってください。

最初のうちは、これを指摘するのも苦労します。
理由は、聴いている最中に、話の悪いところばかり探しながら聴いているのに慣れているからです。是非、両方を探しながら聴いてください。慣れてくれば、簡単にできます。

④ ある意味では、ここがすべての中心です。②と③はウォームアップの位置づけ。⑤はウォームダウンの位置づけ、です。
まずいと思ったところや改善が必要だと思ったところは、事欠かないと思います。
指摘する時は、優先順位を考え、いいところ2つ、多くても3つぐらいに留めます。それ以上では、言われた側は取り組む気がなくなってしまうからです。★★
ここの難しさは、指摘やアドバイスをしてしまいたくなるのを抑えて、それを質問の形に変えて尋ねてあげることです。指摘やアドバイスの主役は、それをする側ですが、質問の主役はそれをされた側になるからです。ようするに、どう考えるのか、どうするのかを、相談や発表した人に問いかけるわけです。あるいは、たとえ自分は回答をもっていたとしても、相手や全体が考えるように投げかけるのです。そうすると、指摘やアドバイスをするよりも効果は何倍にもなります。(自分がもっていた答えよりも、はるかにいいものが出てくる可能性すらあります。)
まずは、主役と位置づけてくれたことがうれしいはずです。
そして、回答を自分で考えられます。自分で考えるということは、アクションにも移しやすくなります。「こうしなさい」と言われたら、お付き合いではしてくれますが、打ち込みようは、主体的に動く時の何割加減になるはずです。質がまったく違ったものになってしまいます。
ちなみに、これらの質問に答える判断は、質問された側が決めていいのです。その場で答えてもいいし、持ち帰って熟考してもいいし。いい加減な即答よりも、はるかにその方が誰のためにもいいからです。

⑤ 最後は、これまでのやり取りを振り返ってぜひ強調したいことを、愛を込めたメッセージとして伝えます。長くて15~20秒です。「愛」さえこもっていたら、何を言ってもかまいません。受け入れてくれるでしょう。でも愛がこもっていなければ、受け入れてくれないでしょう。

ぜひ、試してみてください。
そして、結果をぜひお聞かせください。
これは、読むことに価値があるのではなく、することに価値があるものですから。


★ 報告や連絡に、あえて「大切な友だち」をしていても時間の無駄です。それらについては、単によく聞くだけで十分です。せいぜい、わからないところは聞く、ぐらいです。

★★ 数は結構重要です。この点に関心のある方は、国語の書くことや読むことの新しい教え方について書いた『ライティング・ワークショップ』や『リーディング・ワークショップ』のカンファランスの章を参照してください。たとえば、子どもの作文を教師ががんばって添削をして子どもに返すことは、何の意味もありません。それを使って、その後の修正に活かせる子どもは40人中一人もいないでしょう。そんな効率の悪いことを教師はすべきではありません。

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