2014年1月26日日曜日

学校が抱える課題群とその対処法



  10人弱の方々に「1年の振り返り」にご協力いただき、返信をいただきました。
 ありがとうございました。

 その中で、「強いて1冊挙げれば、西留安雄『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』(ぎょうせい)」と紹介していただいた本を早速読みました。
 紹介に値すると思った部分のみ、紹介します。

 最初の章の「学校常識からの脱却」は、見事なぐらいに学校が抱えている課題を明らかにしてくれています。(現職の校長や教師で、課題をこれだけ明確に言える人はどれだけいるでしょうか? 西留さんもこの本を書いたのは、公立の校長を退職してからです。在職中には、書けない内容でしょうか? 校長会あたりからメンバーの総意として、こういうのを教育委員会に指摘し、かつ提案として出すようなことはできないものでしょうか?)

致命的ともいえるような課題にこれだけたくさん直面しているのが、いまの学校なわけです。それらを問題と捉えることができるのか、そしてそれらを自分の問題/自分がなんとかする/できる問題と位置づけることができるのかが、大きな分かれ目です。(もちろん、同じような問題は、社会・経済・政治の至るところに充満しているので、学校だけがおかしいわけではありませんが。)

 その内容は、小見出しを見るだけでも、見覚えのあるものばかりだと思うので、目次を掲載します。






 最後の章では、ご自分で実践されたことも含めて本のタイトルを実現するための20の提言をしています(上記の課題を課題として捉えられれば、やれること/やるべきことのほとんどが見えてくると思います)が、私が賛成できるもののみ、ここでは紹介します。

1 リーダーシップの発揮 ~ 上のような状況に学校がおかれていることを認識して、やるしかないでしょう。他に誰がしてくれるでしょうか? 最低でも2年が目安、と書いてありますが、欧米では3年以上は最低でもかかるとされています。

3 「授業カットなし」を学校常識に

6 学力の向上のために補習システムを確立 ~ 学力向上は、本のタイトルにもなっていますが、結構短命な気がします。教育者の言葉というよりも、政治家、役人、ジャーナリストの言葉という気さえします。

7~13 は教員の力量形成に関する提言です(ひょっとしたら、ここが一番問題が多いかもしれません。要するに、教員が学び方を知らない、という問題です! 自分たちがよく学べないのに、子どもたちの学びをつくり出すことなどできるはずがありません)が、それらはPLCの発想のもと、授業や実践を磨き続けることが望まれているだけだと思います。対象は誰であろうと関係ありません。子どもたちも含められる図になっています。あるいは、作家の時間や読書家の時間のサイクルです。★

14~20は、学校運営に関する項目があげられていますが、どれ(「校務と教育活動のスリム化」「一役一人制運営組織・事案決定システムの導入」「学級の崩れにはチームで対応」「練習漬けの本番はやめる」「行事は学級力・学校力が向上する内容に」「努力する子を徹底的に褒める」)も必要だと思います。
唯一、「職員会議をやめる」は「必要な会議はする」の方がいいと思いました。会議をしないことが、目的ではありませんから。もちろん、教員および子どもたちの力量形成をPLCの発想のもと、授業や実践を磨き続けることで、それらのほとんどが満たせてしまうはずです。


★ 方法は、あまりにも単純すぎるということです。年間を通じて、このサイクルを回せるようにならないと、授業や実践は改善していきません。とくに大切なのが、作家の題材集めや読書家の選書にあたる部分です。 日本の国語教育には、この題材集めや選書という考え方がありません。同じように、教員研修や研究にも。すべて上から(誰かから)与えられるものとして、それらは存在し続けています。それでは、残念ながらよく学べません。よくて、「お付き合い」のレベルが続くだけです。

2014年1月19日日曜日

いじめ問題


また、山形県で中学1年生女子が自殺しました。痛ましいことです。

 

もう、「いじめ防止法」も施行されたのに、「学校は何やっているのか」と思う人もいるでしょうし、いや、「まだ中央から地方に指導が浸透していくのには時間がかかるのだ」と見るか、それとも「そらみたことか、もっと厳罰主義でやらなければダメなんだ」と考えるのか、様々な意見があることと思います。

 

昨年「いじめ防止法」が成立し、施行されましたが、私はこの法律によって「いじめ」は犯罪であるという視点から、強権的にそれを抑え込もうという発想に立っていると感じました。

 

2012年に、このブログで「国連・子どもの権利委員会」からの日本に対する勧告を取り上げましたが、その一部を再掲します。

 (この文章は外務省のホームページにも掲載されているそうです)

 

 その部分を貼り付けます。

 

・高度に競争的な学校環境が、就学年齢にある児童の間で、いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺を助長している可能性があることを懸念する。

・委員会は、締約国が、質の高い教育と児童を中心に考えた能力の育成を組み合わせること、及び極端に競争的な環境による悪影響を回避することを目的とし、学校及び教育制度を見直すことを勧告する。

・委員会はまた、締約国が同級生の間でのいじめと闘う努力を強化し、及びそのような措置の策定に児童の視点を反映させるよう勧告する。

 

 貼り付け終わり。

 

 この3項目がどれほど「いじめ防止法」に盛り込まれたのでしょうか。

 「子ども中心」「子どもの目線」という言葉が使われることは多くなりましたが、それが本当に実現されているのかどうか、ここが問題です。

 わが国の教育行政のあり方については、引き続き注視し、選挙等を通じて、変えていくことが望まれると思いますが、まずは、校長を始めとして、学校現場に立つ人間がそれぞれその置かれた立場で、「子ども中心」の考え方や行動を実行することにあると思います。

 

 

 

2014年1月12日日曜日

授業を変えていくためには



先週の記事に対するコメントから始めます。

 

(先週の記事からの引用)
 
多くの校長やリーダー(管理職以外の学校レベルのリーダーや教育委員会の指導主事)は、多くの教員たちが「子どもたちが主役で、主体的に学ぶ授業」ができていないことを知っている。教科書をカバーする授業が横行していることを。・・・(引用終わり)

 

これまで私自身も「子どもたちの主体的な学び」という言葉を数多く発してきましたし、また頻繁に耳にしてきました。研修会などでは必ず出てくる言葉ですし、指導主事を招へいした研究会では必ず言われることだと思います。日本の子どもたちの教科に対する興味関心の度合いが低いことは国際学力調査などで度々指摘されることですが、このことは裏返せば、「子どもの主体的な学び」が実現していないことを示しています。表面的・形式的な「主体的学び」では意味がありません。「教科書をカバーするだけの授業」は以前よりは少なくなってきつつあるとは思いますが、それでも相当数の教室では日常的に「教科書をカバーする授業」が続いています。

 

最近、小学校の英語を3年生から始めるということや高校で日本史を必修化するという話を聞く度に、教師の教え方が変わらなかったら、内容をどうしようが何も変わらないではないかとつくづく思います。

 

教科書をカバーする授業から抜け出るために、まずカリキュラムづくりから始めてはどうでしょうか。各学校にはそれぞれ各教科等の指導計画が用意されていると思いますが、それを利用するだけでなく、ぜひ自分で担当する教科のカリキュラムづくりを行ってみるとよいと思います。年間のすべての単元でいきなりは無理にしても、いくつかの単元に手をつけてみるところから始めてはどうでしょうか。教科書も数ある指導資料の一つと考えて、目の前にいる子どもたちがよく学べるようにするには、どんな課題、発問を用意して、どんな資料を使えばよいのか、そんなことをいろいろと考えるのが、教師の仕事の面白味の一つだと思います。
 
今、都市圏の小中学校では団塊世代の教職員の退職で、若手の教師が増えていますが、若手の研修というか、自己研修で取り入れてほしいものです。「忙しくて、そんな余裕がない」と言われてしまいそうですが、そこは管理職の出番です。また、不幸にしてそういう上司に恵まれない職場にいる人は、自分で仲間を作りながら、ぜひ追究してほしいと思います。

 

 

 

2014年1月5日日曜日

従来のやり方 vs PLCのやり方


あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

新年早々、しばらくぶりにPLCの本を読み直しました。

Professional Learning Community at Workという本が、1998年に出て(これは、著者の一人のRichard DuFourという人がある教育委員会で教育長をしていた時の実践をまとめたもの)、それに感動し、2001年には訪ねました。
今回読んだのは、その普及版とも言えるLearning by Doing: A Handbook for Professional Learning Communities at Workです。

大筋をまとめると、以下のようになります。

多くの校長やリーダー(管理職以外の学校レベルのリーダーや教育委員会の指導主事)は、多くの教員たちが「子どもたちが主役で、主体的に学ぶ授業」ができていないことを知っている。教科書をカバーする授業が横行していることを。
では、どういうふうにしたら、その大事な方法を身につけてもらえるかということになると、皆目わからない状態が続いている。如何せん、本人たちも「子どもたちが主役で、主体的に学ぶ授業」を体験したことがないので。その結果が、数十年もの長きにわたって効果があるわけでもないイベントとしての校内研修や研究授業をやり続ける最大の理由。それが、習慣だから、それ以外のものがあるとは思えないから。

PLCを実践している、とはどういうことか?
     学ぶことへの焦点
     チーム
     探究 ~ スキルとキャパシティを向上し続ける
     改善しながらの実践 ~ 現状打破
     結果指向(単にテストだけではわからない!) = 形成的評価の理解と実践

以下、従来のやり方とPLCのやり方をわかりやすく比較したものを表の形で提示します。(参考: Learning by Doingの249~251ページ)

  <メルマガからの続き>


※ この表への疑問・質問、あるいは感想がありましたら、pro.workshop@gmai.comにお寄せください。なお、評価の項目の「多様な評価法が使われる」について詳しくは、『テストだけでは測れない!』 (NHK生活人新書)をご覧ください。テストよりもはるかに効果的な評価法がたくさん紹介されています。