2015年5月31日日曜日

変化の原則


「校長先生という仕事」(吉田新一郎・平凡社新書2005)165ページに「変化の原則」が取り上げられています。

 
・影響を受ける者が意思決定に参加することが大切。

・本当に意味のあること、真のニーズのあることをわきまえることが大切。

・変化はイベントではなく、プロセスである。従って時間がかかる。

・学校を変えることは、その中にいる人を変えることである。

・変化には準備が必要。

・あれもこれもではなく、少ないものを確実に実現する。・・・・・・・

 
学校ほど、変わらないところはないと思いませんか。

変化を嫌うというか、新しいことに対する抵抗感。

「教室」というハード面の形式も、もう100年以上変わっていません。

教科書をカバーするだけ授業もなかなか変わらない教室が多いのではないでしょうか。

 

「学校を変えることは、その中にいる人を変えることである。」

これも、「言うは易く、行うは難し」です。

教師は5年も経てば、自分なりの指導スタイルができあがってしまい、それをこう変えたらいいと周りで言っても変わらないケースが多いですね。

まずは、先輩教師は後輩に対して、自分が学んでいる姿を見せることが大切ですね。校内で学び合いの機会(いわゆる校内研修以外にペア又は小グループで)が持てればさらにいいです。また、管理職は自らが学びのリーダーとなって、学び続けることです。「管理の論理」よりも「学びの論理」を優先させることです。よほどの緊急事態でもない限り、これはどの学校でもできることです。

話は変わりますが、大学生でも人間関係がうまく作れない学生が増えています。ですから、週1回のセミナーの時間に、小中学校でやっている「学級活動」のようなことを取り扱っています。休みが続く学生には連絡を取ったり、個人面談をしたりしてサポートしていますが、面談の時によく話をするのが、この「変化の原則」です。

だれかがやってくれるのを待つのではなく、自分から動くことの大切さです。

他力本願で、良くない状況が好転するのをただ待つのではなく、自分から変わること、そして変化には時間が必要なことを話しています。

 

2015年5月24日日曜日

保育から学ぶこと


数年前から大学で、「幼稚園教諭」を志望する学生を対象とした授業も担当しています。

最近思うことは、学校教育も保育に学ぶべきことがたくさんあるということです。(もちろん、幼稚園も学校教育法に規定される学校教育機関の一つなのですが。)
    
   たとえば、幼稚園教育要領の中で、「幼稚園教育は、幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うものであることを基本とする」と書かれています。そのために、子どもたちが主体的に活動できるようにするために、環境を構成していくのが教師の役割であるというのが基本的な考え方です。ここには、「意欲的、自発的に活動する」子ども観が根底にあります。

 つまり、教師が主体となって子どもたちをある方向に導いて行こうとか、教えてあげるというのは、「基本的に方向性が違います」ということです。このことは、小学校以上の学校でも原則は同じではないでしょうか。ある保育園の園長が「これまでの学校教育はあまりにも『教える』という意味合いが強すぎたのではないでしょうか」と語っていましたが、その通りだと思います。

学習する主体である子どもたちが意欲的に学べるような「環境」を用意して、うまく学習が進むように調整していく役割がこれからの教師の大きな仕事であると言えます。

 幼稚園教育においても、最近は早期教育と称して、「英語教育」などが取り入れられているところも増えているようですが、それが単に小学校教育の先取りとして行われているのであれば、残念な話です。同様のことは、小学校の英語教育導入にも言えることです。グローバリズムの進展により、せめて英語ができないと国際人にはなれないというような風潮から小学校英語の実施に踏み切ったのだと思いますが、英語よりはまず母国語である「日本語」をどうするかのほうが先であることは自明のことです。

    その具体策としての「リーディング・ワークショップ」「ライティング・ワークショップ」にさらに多くの人の注目が集まることを期待したいものです。

2015年5月17日日曜日

奇跡のレッスン ~世界の最強テニス・コーチと子どもたち~



昨年放送された「奇跡のレッスン サッカー編」に続く第2弾です。
私の印象というか、見たこと(=読み取ったこと)は、これを書いた人とは大分違います。

教室や学校で教えることとの接点は、前のサッカーもそうでしたが、あまりにも多すぎます。

いずれにしても、見る人によって、何を読み取るかは大分違いますので、ぜひ再放送をチェックして見てください。

なんと、最初に会った時に、自分の名前が言えない/挨拶ができないところからスタート!! これも、日本の教育(社会)の産物? そして、1週間のハイライトは・・・(青字は、吉田のコメント)

●初日
1週間=7日間のレッスンなのですが、初日は観察することに徹する。
改善点を見つける。
聞いて見る。
性格・個性もプレーのうちなので、それも把握。
~ この辺、ライティングやリーディング・ワークショップと同じ。まずは、子どもたちのことを把握することが先決。そこからしか何も始まらない。でも、日本の場合は、それなしに指導が始まってしまう。それって、本当に「教える」と言えるのか???
自分の夢を達成したいなら、「鉄の魂」をもつことをテーマに設定!!

●2日目
基本こそを大切に
足を踏み込んで打つ/ボールをコントロールして打つ。
(日本の子どもたちは、どのボールもただ強く打つようにしていた。)
遊びで、ボールコントロールを意識させる。最後も遊びで終わる。
楽しむことが大切。~ これも、ライティングやリーディング・ワークショップに通じる! とても大切なこと。日本は何でも根性、がんばる、苦役になりがち。
自信のない子には、近くで声をかける。「好きなプレーヤーは誰?」そして、その人になりきるように、アドバイスする。

●3日目
遊びからスタート: ワンバウンドでボールを相手に当てる
常に決断 → 何事も同じ? でも、日本の教室や学校は判断しない/させない場??
打つ前に待つに判断する: コート(ボール)を赤、オレンジ、緑の3つに分ける。
赤は、守りのゾーン。オレンジは中間、緑は簡単なショット。
事前に目的を明確にしてから打つ。 テニスは決断の連続!!

●4日目
サーブの改善 ~ 3段階に分けて取り組ませることで
①上半身だけで打つ(バランスボールに座って、上半身だけを使って打つ)
②立って、上半身だけで打つ
③改善したサーブを練習する
12歳の子どもたちは「もう大人」 → 自立を促す
モチベーション(Motivation)は、モーティブ「MOTIVE」とアクション「ACTION」が合成されたものです。「MOTIVE」(モーティブ)の意味は、動機、理由、目的です。 ACTION」(アクション)の意味は、行動、活動、働きですから、 モチベーションの意味は、「目標を目指した行動」ということになります、という説明(これは、保護者対象に)。

「学びは楽しさの中に」 ~ ウォームアップとクールダウンはゲームで!  ~ この楽しさという考え方が日本のスポーツ界にも、授業にもない。真面目に、一生懸命に、常に「ファイト!」しかない。疲れてしまう。楽しくないと続かない。 ボールを拾う時も走ってしていたのを、ゆっくり歩いて拾ってと言われて、子どもたちは戸惑っていた!

●5日目
「楽しさがあれば、耐えられる」 ~ 苦役だけでは、無理
持久力 = メンタル
ボールの色は、状況に応じて変わる。 → 3日目のレッスンの発展形。指示が違うので子どもたちみんな戸惑う。応用が弱い/ない!! 機械的に同じことをすることに慣れすぎている。例:緑は簡単なので間違わないんではなく、リスクを犯して攻めることを意味する。

●6日目
すべては成長のプロセス
「楽しいから続けられる」
試合をして途中から来た子に「試合どうだった?」と聞くと、「ベスト8止まりだった」という返事。でもより大切なことは「練習でして来たことを使えたか?」や「楽しめた?」親も聞く時はこれらを優先的に聞いてください。そして最後に結果はどうだったの順番で。 ~ 日本の場合はテスト(勉強)でも同じことが起きている。結果しか気にしない。プロセスとして見ない!★
「子ども時代の試合の結果は意味がない」と言い切る。
車の運転と同じです。常に隣に検査官が座っていて、評価され続けたら、誰が運転したいでしょうか?? ~ 日本の教育でやり続けていることは、まさにこれ!!
「子どもにかける言葉(行動も)を考え直さないと」という日本人コーチの話し。

●7日目 ~ チーム内での試合 (4ゲーム先取)
これまで6日間で、誰と誰が試合をすることに価値があるのかを見てきた。それを踏まえて対戦相手を組む。
でも、試合で勝つことにそれほど価値はない。プロセスこそが大切だから。
試合★★を見る視点は、
     試合中の態度・姿勢
     ボールコントロール=集中力
     どうしたらポイントが取れるのかを考えているか?
前の日に、「何を目標にして試合に臨むか」を考えさせていた。
試合中ないし試合後にきく質問★★は、
     試合中に何をしようとしているのかな?
     ポイントを取るために何を考えてた?
     もう一度試合をするとしたらどうする?
「リスクを負って攻撃することに挑戦してみて」というアドバイスも、子どもによっては。

最も楽しむ者が、最も強い!! ~ 最も楽しむ者が、勉強もできるようになる!!

ミスはすでに過去のもの、そこから学んで次に行くことこそが大切。
すべては自分の決断次第。 = 敵に勝つために、自分に勝つ。

いいところはほめる!

「テニスを楽しんでやる」
楽しさとは、自分で決断できる喜び  ~ 学校で学ぶことも同じでなきゃ!!


★ 学習の場合、結果イコール試験である限りは、おかしい気がします。
  なかなかそれをプロセスとは捉えられませんし、それを★★の視点で見たり、★★★のような問いかけをすることもできませんから。
  要するに、試験/テストよりもはるかに効果的な評価=結果を表わす方法が求められていることを意味すると思います。
  そもそも、試験/テストは子どもたちがやりたいものですらありませんし。


2015年5月10日日曜日

「生徒たちとともに作るプロジェクト」


   過去2回の書き込みで情報提供を求めていましたが、私立S校のT先生が実際にいま動いている事例の紹介をしてくれました。

3月後半から具体的に始動し始めた学院のスーパー・グローバル・ハイスクール(文科省が認定)のプロジェクト「多文化共生の視点から 〜これからの日本、世界を考える〜」に今現在、高1から高3メンバー総勢50名で毎週月曜日プロジェクト学習をしております。

立候補した8名の生徒の学習リーダー、様々な教科の先生たち10名ほどが一緒に関わり、私はその企画作りの中心を担っております。

最終的には各生徒たちがそれぞれの「問い」をたて、フィールドワークに行き、その問いについて検証、省察、発表という流れです。

移民問題を切り口に、日本の移民の歴史、現状、日本人(日本国)の成り立ちについて、文化や宗教の摩擦、共同社会の問題点、日本や世界の政策等、様々な分野を多角的に学んでいきます。

まさに、ゼロからカリキュラムを創る、という立場に立たされています。

前任校との違いは、(カリキュラムづくりの運営をしていた)このプロジェクトには「生徒が主体的に参加」している点。

しかし、これこそ一番実践したかったことなので、今、この上ない至福の時間を味わっております。

とにかく驚きなのは部活でも忙しい彼らが、「明確な答え」がない根本的な地球課題の問題に真摯に取り組もうという姿勢。 

「僕たちは移民についての専門家になるのではない。この問題を切り口に学習し、多角的な視野をもち、新しい世界観を得て、そしてこれから生きる社会をより良くするために自分が何らかの形で貢献していきたい。」

学習リーダー初め、このプロジェクトに参加している生徒たちの代表的な言葉です。

教師が提供するフィールドワークは、対馬、青森、沖縄など日本国内、そしてオーストラリアやドイツと海外視察もあり、先生たちの専門分野を提供することができます。

さらに、生徒たち自身が、それぞれの分野(歴史、宗教、政治等)を各自がリサーチし、
ともにグループ学習する中で彼らたちからも新たなフィールドワークの提案をしていくという流れとなりました。大学ほど専門性はありませんが、まさに小さな教養学部(リベラルアーツ)を作っていこうというイメージです。

ライティングやリーディング・ワークショップ★の流れのように、生徒からのニーズや実態を踏まえ、まず教師や専門家からのミニレッスンを提供し、その後に彼らの活動や振り返りもあり、発表も視野に入れています。
調べる、書く、読む、発表する目的が明確です。

実はこのような高校生が企画運営するプロジェクトはまだいろいろとあるそうです。

また何よりも嬉しいのは、こういう生徒たちの姿を教科の枠を超えて、多くの先生たちと共有し、そしてお互いの知を提供しあえること! 学び合える喜びです。

今は試行錯誤の段階ではありますが、生徒たちの知性に、活動力に多大な信頼を置きながら、スーパー・グローバル・ハイスクールのプロジェクト作りの過程を大事にし、そして思いっきり楽しみたいと思います。

 他の高校の事例や、小・中学校の事例も大歓迎です。
 生徒たちはもちろん、教師もイキイキと自らの学びを作り出していく授業やカリキュラムづくりをお願いします。


★ このプログ(http://projectbetterschool.blogspot.jp/)の左上に、「ライティング・ワークショップ」を入力して検索すると、たくさんの関連記事があります。また、
https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/ はライティング・ワークショップに特化したサイトで、http://wwletter.blogspot.jp/ は、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップに特化したブログですから、ぜひご覧ください。

2015年5月3日日曜日

「誰もがいつでも学び続ける組織」の作り方



『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』デビッド・マルケ著★を読んでいたら、「誰もがいつでも学び続ける組織」にするために、以下の3つを実行したそうです。

    ・    専門的知識★★を高める
   ・ 専門的知識★★をもったら、決定権を委ねる
    ・ 決定権が、勤勉さ、やる気、自発性を増す

この決定権の部分を、教育に当てはめることは可能でしょうか?(そもそも、専門的知識やスキルを高める構造になっていない、という声も!)従って、「やる気や自発性」につながらない状態が恒常化しているのかもしれません。

しかし、なかなか学校の中で決定権を委ねることは難しいので、何がそれに変わり得るかと考えました。「子どもたちの学びの質や量の向上と子どもたちのイキイキした顔」ではないでしょうか? 子どもたちの「勤勉さ、やる気、自発性」と言ってもいいかもしれません。(『理解するってどういうこと?』の中には、このことを別な言葉で表してくれています。)それらが得られれば、教師の「勤勉さ、やる気、自発性」も増し、好循環が回り始めます。現状は、悪循環がグルグル回っている気がします。

既存の研究授業・校内研究や官製研修などのイベント的な研修に無駄な時間やエネルギーを奪われることなく(それらから価値ある知識やスキルを獲得することはとても困難ですから)、上記の好循環を回すことが求められています。

私(の学校で)は、好循環が回っている(ないし回し始めている)という事例をぜひ教えてください。


★ ちなみに、この本は意思決定をピラミッド構造で行っている究極の組織と言える軍隊の中で、まるで逆さまにしてしまう「支配からの解放」を成し遂げた本です。軍隊構造=日本の教育の構造とは言えませんか? 少なくとも公立の場合は。文科省をトップにして、教育委員会、管理職、教職員というピラミッド構造に なっていることは誰もが認めるのではないでしょうか。軍隊の中ですら、逆ピラミッドにすることができたのですから、学校でできないはずがありません! その際の3つの柱の一つが「誰もがいつでも学び続ける組織」です。これがなければ、転換は不可能ですから。

★★ 本文では「知識」だけになっていますが、私は「知識やスキル」と書き換えたいです。