2015年12月27日日曜日

ルネサンスの学習者

 『理解するってどういうこと?』の206ページ(第6章) と 『たった一つを変えるだけ』  

 おかげさまで『たった一つを変えるだけ』の売れ行きは好調です。
 発売以来ずっと、アマゾンの「学校教育一般関連書籍 売れ筋ランキング」のベスト3を維持しているそうです。(タイトルに惑わされて購入してくれているのでしょうか?)

 先週、『理解するってどういうこと?』も重版になるというので、修正の必要な箇所を直すために読み直しました。改めて、これほど中身の濃い教育書にはなかなかお目にかかれないと思いながら読みました。

 この本にはあまりにもたくさんのハイライトというか得るものがあるのですが、その中から一つ紹介します。
 第6章のタイトルは「理解のルネサンス」で、206ページには「ルネンサンス的思考を促進する教室」の特徴がまとめられています。(下の表)
 
 そうなんです、これのかなりの部分は『たった一つを変えるだけ』で紹介している内容とオーバーラップするのです。

 あと4日で2015年も終わりです。

 2016年を、あなたにとっても、子どもたちにとってもルネサンス的思考を促進する年にしますか? それとも、これまで通りの中世の暗黒時代のままでいきますか?(←『理解するってどういうこと?』の著者が第6章で投げかけている問い)

 今からでも遅くありません。この年末年始を、ぜひ暗黒時代から抜け出してルネサンスにするための準備期間にしてください! よいお年を。 Whatever it takes.


2015年12月20日日曜日

若手教員★の効果的なサポートの仕方

いま多くの自治体で新任教師を含めて若い先生が増えています。
でも、いったいどうやって「いっぱし」の先生になってもらったらいいのでしょうか?

いわゆる「研修」でないことだけは確かです。★★

ポイントを以下の3つに絞りました。

1.何を身に付けること/身に付けたいか優先順位をはっきりさせる
2.具体的なモデルを見てもらう
3.「大切な友だち」としてフィードバックし続ける

これは、ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップの授業でしていることと同じです。★★

詳しく見ていきます。

1.たくさんあるかもしれませんし、必要性が(見えてい)ないので少ないかもしれません。いずれにしても、『たった一つを変えるだけ』の質問づくりの要領で、当人がリストアップしてみます。サポートする側も「客観的な立場」で見ていて必要性の高いもののリストを出してみて、両方を併せたものの中から、年度内に取り組む優先順位を決めます。3つも決めれば十分ではないでしょうか。(ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップの時にするカンファランスと同じです。あまりたくさんのことを一挙に取り組んでも身に付きませんから。)こうすることで、当人が身に付けたいことだけでなく、必要性の高いものも含まれる可能性が高まります。
 また、こういうプロセスを経ることで、やらされ感よりも、「やるぞ!」ないし「やらなければ!」という意識も高まります。

2.実際に取り組む際に何よりも参考になるのは、理想に近い状態を実際に見てもらうことです。校内で不可能な場合は、近場で探して。実現すべき姿を明確にしたら、あとはそれにどう近づいていける(あるいは、それを越えられる)かの模索が続きます。
 その意味では、サポートする側はいろいろな状況を知っている/情報を集めている必要があります。(これが、いまの学校では大きな課題かもしれません。でも、管理職や教育委員会の指導主事も有効に活用して、情報集めをしてみてください。)
 もし、身近に見つからない場合は、本や雑誌の記事を一緒に読むという選択肢もあるかもしれません。ブッククラブの要領で

3.改善のプロセスが展開している間、ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップの「大切な友だち」=カンファランス的なフィードバック★★★が常にあると、フィードバックされる方はもちろん、する方も常に成長できます。


ここに書き出したことは、「人事考課」の名の下に、管理職と教員がしていることを実効性のあるものにすることと言えるかもしれません。ほとんど機能しているとは言い難い教員研修(研究)や人事考課を実質の伴ったものにするためのヒントにしていただければ幸いです。


★ 年は取っていても、教師として身に付けるべきものをもっていない教員も当然のことながら対象に含まれます。

★★ いい授業といい研修(というか、教員の学び)は、構造的に同じなのですが、どうも両方ともが悪い形で行われているのが日本の学校での学び方という気がします。この辺について詳しくお知りになりたい方は、『「読む力」はこうしてつける』の58~68ページと、『ペアレント・プロジェクト』をご覧ください。)

★★★ いわゆる伝統的な指導とは、大分ニュアンスが違います。そうでないと(もちろん、それも部分的には含まれてはいますが)、相互に学び合える関係にはなりませんから。


2015年12月13日日曜日

学べる会議をつくる


少し前に、大学生たちと会議について考える機会をもちました。テキストは「『学び』で組織は成長する」(吉田新一郎・光文社新書,2006)です。

彼らは私が考えていたほど、これまで会議をする機会が多くなかったようです。そのため、次のような文章を読んでもあまりピンとこなかったようです。(同書p.144)

 某大学で教え始めるようになって15年近くになる西村さんは、かなりの時  
間を会議に費やしている。 教授会をはじめ、学内の会議がいろいろとある 
だけでなく、役所等の委員会の委員にもなっているので、会議のない日は
ないくらいである。
     しかし、振り返ってみると出席してよかったと思える会議はそんなには 
 多くはない。もっと正確に言えば、「時間の無駄」と思えるような会議や 
 「腹の立つ」会議が多い。

  その理由を考えてみると、次のようなものが挙げられる。

・会議の目的が明確になっていない。

・単なる伝達・報告が多すぎる。

・いつも発言する人が決まっている。

・司会や担当者の発言に偏り、反対意見や異なる視点の意見が出にくい。

・職場の人間関係があるので、言いたいことが言えない。

・皆で決めたことが、最終的に一人(ないしは一部)の人の意見ですりかわ
 る。

・意思決定の方法がはっきりしない。

・合意が形成されたのかの確認がされず、なかなか実行されない。
   
 ここに書かれた理由については、多くの学生がわりと理解できると発言していましたので、そんな会議を経験してきたのだろうと思います。この問題の解決策として、この本では次のように書かれています。
   
 最初にしたことは、会議の終了時に三分間の時間を確保して、出席者に会議の印象を何でも書いてもらうことだった(無記名で)。出された意見の多くは、さきほどのリストに挙げられたようなことだった。
    出席者の問題意識は共有されていることが確認できたので、次にしたことは座り方を工夫することであった。会議と言えば、ロの字型に座るものと決まっているが、参考にした本によると、この座り方は必ずしもよくないと書いてあったからである。3~4人ずつのグループになるように座ってみた。このグループでの話し合いと、全体での話し合いをうまく織りなして進めていくと、先にリストアップした会議の課題の半分くらいが解消してしまった。
   
 会議のときの座席の取り方も、「そういえば、ロの字型が当たり前に考えていたけれど、それ以外の形もあるんだね」と新しい発見をした学生もいました。学校には様々な会議があると思いますが、それをどれだけ効率のよいものにできるか、そんなところから学校改善を始めてもよいかもしれません。学校では当たり前の習慣になっているものを、一度見直して、時代遅れのものはなるべく早く変えていけるといいと思います。そのときの「変化の原則」についても、「効果10倍の教える技術」(吉田新一郎・PHP新書,2006)で確認しておくとよいでしょう。無駄を省くためにも必要なことがすっきりとわかります。

 

 

2015年12月6日日曜日

意味のある研修を


先週のこのブログの内容をどう受け止められたでしょうか。

私はこの記事の核心である次の文章を、多くの先生方と共有したいと思いますがどうでしょうか。
   

可能なら学校レベルで、最低でも数人の仲間単位で継続的な取り組みが必要なことを意味します。(講師の継続的な関わりが確保できれば、それに越したことはありませんが、より大切なのは同僚同士の日常的な助けあいや刺激のしあいです。)

それが、研修というものです。

  私自身、研修を受ける立場と運営する立場の両方を経験しましたので、そのとき限りの研修がほとんど役に立たないことは実感としてわかります。せいぜいプラスの効果としては、研修の中で紹介された本を読んでみて、それがよかったという程度のレベルでした。研修講師の立場からも研修後のフォローを続けるというのも現実問題としてはハードルが高すぎます。

   
 かつて指導主事をしていたときに、「若手教員研修」という企画を立てて、年に5回その先生の勤務校に出向いて行って、マンツーマンで研修するということをやったことがありますが、それでさえ、せいぜい年に5回です。その企画でも一人の指導主事が担当できる教員数は5人程度が限界です。そう考えると私が勤務していた市の規模でも数千人の教員がいるわけですから、この程度の研修でも、受けることのできる人数は微々たるものということになります。

 
そう考えると、「同僚同士の日常的な助けあいや刺激のしあい」がいかに効果的で現実的なものかがよくわかります。以前、このブログでも書きましたが、自分の経験でも、教師生活の中で何が最も研修として役に立ったかと言えば、20代のころの校内での同年代の気の合う仲間たちとの「日常的な助けあいや刺激のしあい」でした。

これは、学級経営や教科経営などを進めていく上でとても効果があり、仕事への意欲を継続させるという点でも大きな効果があったと思います。

 
都市圏では教員の大量採用がしばらく続いてきました。いろいろと問題点もあるようですが、これはある意味、チャンスではないでしょうか。校内で「日常的な助けあいや刺激のしあい」を行う機会をもつことができれば、多くの若手教員にとって、教師としての力量アップにつながることは間違いなしです。授業も間違いなく面白く、魅力のあるものになるでしょう。


管理職の先生方には、そんな若手を後押ししていただくだけで、学校は活性化すると思いますが、どうでしょうか。