2017年1月29日日曜日

ニュースの裏側


先月、次のようなニュースが話題になりました。日本経済新聞のWeb版から引用します。
   

『DeNA、まとめサイト問題で第三者委設置 「MERY」も非公開化へ』 

 2016/12/5 18:55

「ディー・エヌ・エー-は5日、インターネット上の情報をまとめた「キュレーションサイト」事業に対し、外部専門家で構成される第三者調査委員会を設置して調査すると発表した。キュレーションサイトは根拠が不確かな記事の掲載などの問題が指摘されており、同社は既に9つのサイトの公開を停止していた。」
   

ネット上の情報をまとめた「キュレーションサイト」の記事の中に根拠が不確かなものの掲載が行われていたという問題です。特に、医療情報などについて,ウソの内容を含む記事を大量にWeb上に提示したことが問題視されています。医療情報は場合によっては命にかかわることですから、単にウソの記事を載せたというだけでは済まなくなるものです。

この「キュレーションサイト」というのは、他のサイトや書籍から情報を集めてきて、それをわかりやすくまとめたサイトです。そうした「まとめの情報」を掲載することで、サイトにアクセスする数を増やして、広告収入を稼ぐのが目的のようです。

 
改めてネットの中の情報も、他のメディアと同じように、玉石混交であるということを今一度確認する必要があると思います。溢れかえる情報の中から、ウソの情報で踊らされることのないようにしていきたいものです。
   
そうは言っても、なかなかこれは難しいことです。

私自身も最近になって、初めて気づいたことがありました。

それは、「地方再生」に関連して語られることの多い「コンパクトシティ」という文言です。

これまで、この言葉については、さして気に留めていませんでした。ところが、最近私の住む市が「立地適正化計画」の素案を公表し、パブリックコメントを募集するということを知って、初めてこの言葉の意味を調べてみました。その意味を青森市のホームページに掲載されていた説明文から引用しましょう。
   

「住まい、職場、学校、病院、遊び場などさまざまな「機能」を、都市の中心部にコンパクトに集めることで、自動車に頼らず、歩いて生活することのできるまちのことです。」

 
この考え方に基づいて青森市が行った取組の一つが中心市街地の活性化でした。
そのため、青森市は総事業費約185億円をかけて複合商業施設「アウガ」を建設し、20011月開業させました。地下1階が「新鮮市場」、1階から4階までが商業施設、5階から6階が「青森市男女共同参画プラザ」、6階から9階が「青森市民図書館」となっています。当初この複合商業施設には、年間600万もの人が訪れ、青森市の取り組みは、成功事例として取り上げられました。

しかし、その後経営は悪化し、運営会社が危機的な状況に陥ると、青森市が債務を買い取ったことで市民が反発し、コンパクトシティを推し進めた市長が退任しました。2015年度決算において大幅な債務超過となり事実上の経営破たん状態に陥ったことが判明し、経営問題が深刻化しています。
   
実は、同様の事例は秋田市でも起きています。このコンパクトシティ構想は国土交通省が旗振り役となっていますが、発案は総務省あたりでしょう。「地方再生」と言いつつ、不必要なものは切り捨てて、鉄道の駅周辺に人口を集中させ、インフラ整備なども効率よく行い、人口減少社会を何とか乗り切ろうという計画のようです。人口の集中するところとそうでないところを峻別するプランです。そうなると、里山の自然など守れるはずがありません。自然の多様性の象徴でもある里山がなくなったら、人は生きていけるのでしょうか。

 
韓国でも同様の事態が進行しつつあるようです。気づかないうちに(あまり目につかないところで)、こんな重要なことが進行していました。市民社会の担い手である私たち一人ひとりが社会の動きにもっと関心をもつ必要があります。

 
民主主義社会を維持していくためには、一人ひとりの子供たちをその担い手として育てていかなければなりません。そのためには、このブログで発信しているような教育に基づいた授業が日々どの学校でも行われていく必要があると改めて思います。

 

 

 

2017年1月22日日曜日

あなたの「マインドセット」は??


あなたは、人の能力は固定的と捉えていますか? それとも伸ばせる(あるいは、縮んだりする?)と思っていますか?
前者を「硬直マインドセット」、後者を「しなやかマインドセット」といいます。

両者を比較すると、次のような表になります。(出典:『マインドセット「やればできる!」の研究』キャロル・ドゥエック著、p21
  
これは、以下のように、対人関係にまで影響を及ぼします。

 能力を固定的に捉える  能力は伸ばせると捉える  
 ・拒絶されると、否定されたと思う  ・相手を許すこと
  →復習
 ・自分の人間的資質は変えようがない ・自分の資質も、相手の資質も、関係の質も
 ・相性として見てしまう                           変えることができる
                                                               <人間関係は、育む努力をしない限り、ダメ
                                                           になる一方で、決して良くなりはしない>

(出典:『マインドセット「やればできる!」の研究』キャロル・ドゥエック著、第6章)

 教師がどのようなマインドセットをもっているかは、決定的に重要です!! それは、授業や教室ですることすべてに表れてしまいますから。

◆では、どうしたら「しなやかマインドセット」をもてる(さらに磨ける)のでしょうか?
(読んで終わりにせずに、ぜひ試してください!)

1 自分が得意でないことにあえて挑戦する ~ 得意なことは、できて当たり前! 子どもたちに、自分も挑戦しているところを見せる。(モデルを示すことにこそ価値がある)

2 失敗をおそれずに新しいことに挑戦する ~ うまくいかなかったら、さらに考えて挑戦しなおせばいいだけ。失敗こそ(成功よりも)、学びの糧。

3 フィードバックを、同僚や子どもたちから求める ~ 自分だけではなかなか見えないので。

4 振り返ることを習慣にする ~ 振り返り→修正・改善の流れが作れたら、常に成長し続けることが約束される。

5 常に新しい知識やスキルを身につけようとする ~ いまの自分に満足しない。そして、よくなることを待たない。いま、取り組む!

6 自分が固定的な見方をしていること(分野)に気づく ~ 気づければ対処/挑戦のしようがあるが、気づかなければ対処することを放棄したままが続くだけ!



2017年1月15日日曜日

スターター(Starter)になろう


先日あるところで、文部科学省教科調査官の講演を聞く機会がありました。

テーマは次期学習指導要領がどう変わるかということでした。
    
その話を聞いて、文科省も相変わらず中途半端なことをしているなというのが、私の実感です。

授業観の転換という非常に大きな変革が要求されるアクティブ・ラーニングやコンピテンシーベースの考え方を本気でやりたいのならば、もっとそのあたりを本気で言わないと「学校現場には通じません」という感じです。

アクティブ・ラーニング一つとっても、学校現場の教師たちには何が届いているのか、非常に不安です。そして、当日の話で笑ってしまったのは、「アクティブ・ラーニング」という文言は新学習指導要領の中にはそれほど多くは入らないだろうという調査官の見通しでした。あくまで個人としての見解だと言いながらも、最前線で指導要領の文言作成に携わっている人ですから、それなりの信ぴょう性はあるでしょう。

これは、あまりにも「アクティブ・ラーニング」という言葉ばかりに光が当たりすぎてしまったことへの「反省的行動」なのでしょうか。マスコミもこの点ばかりに注目していますから、ちょっと困ったことになったなというのが文科省の本音でしょうか。

そうだとすると、先ほども述べたように、中途半端というか、一度上げたアドバルーンを慌てて下すというような滑稽な話です。本気で変えようとする意志があるのか、疑いたくもなります。

文科省自身が大きな転換だと言っているのですから、もっと現場をサポートするような手段を講じてほしいものです。これまでのように中央伝達講習会→都道府県→市町村教委→学校ではだめです。この発想から抜け出せない限り何も変わりません。

ICTがあるのだから、たとえば、ネットの中継やら、オンラインの研修が各学校あるいは個人レベルでできるようにするとか、「できることは何でもやる」くらいの気持ちがなければ、何も変わりません。

Innovationが必要なのです。

これまでの発想を捨てて、新時代に相応しい伝達やら研修のあり方を本気で考えないといけません。その旧来の慣習が捨てられなければ、学校は変わりません。文科省が手本を示さなければ現場は変わりません。

各学校から一人か二人ぐらいを教育センターに呼びつけて、悉皆研修をやってみてもだめだとつくづく思います。

国の動きはいずれにしても、まずは各学校で先生方一人一人が「スターター(Starter)」となって、できることから始めましょう。動き出さなければ何も変わりません。

2017年1月8日日曜日

振り返りこそが学び/成長の鍵 ~ 年間を通して振り返る


ある意味で、先週の続きとも言えます。

あと2か月ほどで学年末です。ということは、成績の時期であり、その後は1年の振り返りと新しい年度に向けての準備ということになります。(それにしても、自分が受け持つ学年が分かってから、数日で実際に授業が始まってしまうというのは、どこかおかしいと思いませんか?★)

でも、「振り返り」は最後だけでするものではありません。(それでは、残念ながら学びと成長の糧にはなりませんから。総括的評価の悲劇は、成績は出してくれますが、それを踏まえた学びや成長の時間と機会をまったく提供していないことです。したがって、ほとんどそれを付けるサイドに過剰な負担を強いるだけで、何もいいことはないと言えます!)
できるだけ頻繁に振り返りをすることこそが、学びと成長の鍵です。

◆保護者にも参加してもらう振り返り

それは、最初の日からできます。
子どもたちや保護者たちに、教師に知っておいてもらいたいことを手紙の形で書いてもらうのです。
これは、振り返られないと(同時に、ある程度は、未来も見据えないと)書けません。
そして、それが年間を通してのバロメーター的な存在にもなります。

成績(通知表)のやり取りをする代わりに(ないし、それに加えて?)、この手紙のやり取りをした方が、誰にとってもいいぐらいだと思います。通知表ではコミュニケーションが成立しませんから! そうなると、年に最低でも3回のやり取りが確保できます。(もちろん、書きにくいことがある場合は、電話や実際に会って話し合うことが選択できるようにするのがいいでしょう。)

手紙の代わりに、アンケートに答えてもらってもいいかもしれません。次のような質問に応えてもらう形で:
       お子さんにとって過去一年間(今学期)で一番よかったことは何ですか?
       お子さんが一番成長した点はどんなことですか?
       逆に、成長を期待していたのに、期待はずれだった点は?
       学校と家庭とのコミュニケーションに関してはどのような感想・印象をもっていますか?
       読み(書き、算数・数学、理科、社会科・・・・)ではどんな成長が見られましたか?
       何でも私に伝えたいこと/知らせたいことがありましたら、お願いします。

◆生徒たちとの振り返り

 常に振り返ることで、よりよい決断や選択ができるようになることを、ことある毎に教えます。
 自分のした授業に対する振り返り=評価もしてもらいます。(そうすることで、次に同じようなことをする際のヒントが得られますから。もちろん、子どもたちへのメリットは、自分が何をどう学んだのか、期待していたのに学べなかったのは何か、今回の授業をきっかけに今後学びたいのは何かなどを考えることができます!)★★

でも、やはり学年の最後はとても大切です。
読み手として(書き手として、数学者として、科学者として、市民/生活者として・・・・)自分はどう成長したか?(これを説得力もって示せるためには、1年間を振り返る必要があります。いま、それを可能にする教え方をしていますか??) そして、来年度はどんな読み手(書き手、数学者、科学者、市民/生活者・・・・)を目指したいか? この質問は、ユニット★★や学期毎にも可能だと思います!

そして、保護者と同じようにアンケートは、生徒にとっても教師にとっても、とてもパワフルです:
       1年間(今学期)でよかったことと悪かったことをあげてください。
       自分の好きな教科は? その理由は?
       嫌いな教科は? その理由は?
       自分が成長したのはどんな点ですか?
       まだ成長したい/成長しなければいけないと思っているのは?
       読み(書き、算数・数学、理科、社会科・・・・)の授業で変えられるとしたら、何を変えてほしいですか?
       逆に、変えてほしくないのは?
       何でも私に伝えたいこと/知らせたいことがあったら、書いてください。

 このような質問を生徒や保護者にするということは、自分を不安にさせる部分はありますが、実践を改善していくにはベストの方法です。個々の生徒や保護者にフィードバックをしてもらうことこそが、いい関係を築くことにも、そして互いの学びを最大限にしていくのにも最も効果的な方法です。


★ 準備期間を設けていません。(その意味では、夏休み前に学年が終わって、秋に新学期が始まるというのは、準備期間をたっぷり設けたスケジュールと言えます。)同じレベルでおかしいことの一つに、その年度の行事等のスケジュールがすべて前年度中に決まっていることです。これらのプラス面とマイナス面をじっくり考えた人はいるのでしょうか?

★★ これを教科書単元毎にするというのは難しいです。教師にとっても、子どもたちにとっても「自分のもの」と思えにくいので。つまり、単にカバーしているだけなので。その意味で主体的かつ必然性をもたせるためには、カリキュラム(何をどう学ぶのか)やユニットを自分たちでつくり出す必要があります。そうでないと、修正・改善したいとも思えません。このプロセスには、子どもたちにも参加してもらえます。というか、何をどう学ぶかの判断や選択に参加してもらわないと、学びの質と量はなかなか向上しません(結果的に、学力も)。教師(ないし教科書)へのお付き合いレベルの勉強が続くだけです。



2017年1月1日日曜日

2017年を、最高の年にする!


新年おめでとうございます。

1月1日のテーマとしてはぴったりではないでしょうか。
教師として、校長として、副校長として・・・・・(もちろん、個人的にも、家族のメンバーとしても!・・・願わくは、社会や地球社会の一員としても?!)

一般的には未来志向で新たに取り組みたいことを考えると思いますが(すでに年が改まって入ることですし!)、それよりも確実な方法があります。

それは、過去(1年ぐらい)を振り返ってみることです。
①よかった点、②悪かった点(や残念だった点)、③良くも悪くもなくても、よく覚えている点などを。

①をさらに伸ばせられれば、最高の年は楽に実現します。
②を修正・改善できれば、これまた最高の年につながります。
③も、②と同じように修正・改善できれば、最高の年の実現につながります。

ということで、「可能性だらけ」です!
それらに目を向けないで、まったく新しいもので最高の年を実現しようというのは、無謀とも言えます。
もちろん、新しいものの方がしがらみがない分、達成しやすい部分は確かにありますが、これまでの経験から、それが上記の①になるよりは、②や③になる方が確率は高いことがすでに証明されています。(だからといって、葬り去ることを勧めているわけではありません。常にアンテナは張り続けて=情報は集め続けて、自分にとって、子どもたちにとって、学校にとってピンとくるものを探し続けてください。自分が絶えず学び続けることは、すべてのベースですから!)

それでは、振り返る際に鍵となる質問をいくつか・・・・(そうなんです、質問が鍵なんです! それによって、これまでの経験を生かすか殺すかの分かれ目にもなります。)

1)自分が大切にしている価値観は何か?
2)自分の教師(校長、副校長・・・)としての仕事は1年間、どう進化しましたか?
3)どんなところで自分の強みや情熱を表現できましたか? 逆に、自分の弱みが見えたのはどんなところでしたか?
4)生徒(や職員)たちが活躍できる環境や仕組み等をつくり出せましたか?
5)どんな失敗/過ちを犯しましたか? それらについてどうしていたらよかったと思いますか?

1)の「自分が大切にしている価値観は何か?」は、今ちょうど翻訳している本の中にも同じ質問がありましたので、補足します。
 授業をしたり、学級経営や学校経営をしたりする際に自分がもっとも大切にしている価値観を3つあげるとしたら何でしょうか? 
→ 『好奇心のパワー』(キャシー・タバナー&カーステン・スィギンズ著、新評論、近刊)の127~134ページ参照
 もっていたらいいなあと思う価値観ではなくて、すでにもっている価値観です。後者が大切な理由は、「もし、自分が本当にもっている価値観を明らかにできない場合は、自分の生き方と合致できず、自分自身を本当に理解することも、より強固な自己形成もできなくなります」(131ページ)
 価値観と言われただけでは思い浮かばないときは、「価値観 リスト」で検索すると、たくさんの言葉が見つかります。それらの中から自分にとって大切なものを3つだけ選ぶのです。
 なお、自分の価値観が明確でないと、集団の価値観を理解したり、形成したりすることはままなりません。(それが、いまの学校が陥っている大きな落とし穴??) これについては、前述の本の134~140ページが参考になりますので、ぜひご覧ください。

他にも、いい質問が思い浮かびますか?

『たった一つを変えるだけ』が教えてくれていたように、質問がすべての答え(=これから進める方向性)を決めてしまいます。なので、まず大切なのは、いい質問をしてみることです。(間違っても、「いい答え」=「最高の年にするための方法)ではありません!!)

参考: http://www.smartbrief.com/original/2016/12/5-questions-help-you-lead-better-next-year