2018年4月15日日曜日

『言葉を選ぶ、授業が変わる!』を読みました。



 教師の言葉や声かけを扱う本には、「教師が子どもにはこんな声かけをすればOK!」というような声かけのパターン、ハウツーが書かれている本が多くあります。しかし本書は、そのような本とはちょっと違います。

まず第1章の「言葉の使い方が、学ぶ内容や人間性を左右する」では、教師が選ぶ言葉が、子どもの学びにどのように影響するのかについて、事例をもとに丁寧に説明されています。

 『「明確に指導するだけで指導はもっとよくなる」という思い込みは、言葉を話すという事を「情報や知識を味気なくパッケージ化して運ぶ単なるシステム」とみなしています。ですが、このような考え方はまちがっています。社会的な交流の中で、言葉を話すということには、それ以上の働きが含まれています。たとえば、人に何か話すということには、目に見えない犠牲を払っているということでもあります。なぜなら、子ども自身で理解できるにもかかわらず教師が教えてしまえば、その子の主体性や自立心の感覚を形成する機会を奪ってしまうからです。』

 私が授業で実感していることであり、現在の大きな課題です。

 子どもが学んでいる様子をみていると「あっ、ここに気づいたらいいのに。声かけしよっかな。」と思うときがあります。しかし、子どもの学びに介入する事で、子どもの自立的な学びを停止させてしまうのではないか・・と考えて、結局じっと待つことにすることが多いです。そういうときは両手を後ろにまわし、笑顔で見守ります(怖い)。

 でも!じっと待つだけで本当にいいのか?と考えることがあります。実際、待つことで子どもの自立的な学びをある程度引き出す事ができます。しかし、待つことは、教える、与えるよりもただ
マシなだけであって、教師が子どもの学びを促進するアセスメントができたら、子どもはもっと深い学びができるのではないか、とモヤモヤしていました。

 子どもの自立的な学びを促すための言葉を、教師はどのように選ぶ必要があるのでしょうか。

 3章のアイデンティティーでは、その辺をもっと深く掘り下げています。教室で使う言葉によって、生徒の、そして教師のアイデンティティーが形作られる。だからまずは言葉によって、生徒と教師のアイデンティティー、そして2者の関係性を「答えを知っている人と知らない人」から「共に学ぶ人」に転換する必要がある、ということについて書かれています。

 4章は子ども自身が学びを選択できるような言葉を選ぶということについて。本書では、学習者が自分の学び方を自分で選択することを主体性として扱っています。(紹介者注・この点は、ちょっと違う気が! 何がどう違うか、ぜひ読んでみてください。)

本書を読んでいると、自分が今までどれだけ無自覚に言葉を使ってきたことか・・・と反省。
 しかし同時に、言葉って自覚してすぐに変えられるものではない!!ということにも気付かされます。
 言葉の根っこには、その人の受けてきた教育や経験、学びに対する姿勢、生徒との関係性や対峙したときにうまれる感情など、さまざまなものとつながり合っている、いわば身体知のようなもの。パターンやハウツーだけを学んで同じセリフを発しても、それは全く別の意味で伝わってしまう可能性が大きいです。
 その意味では、本書のような言葉を選ぶための根っこに触れようとする姿勢の本は貴重です。
 これからこういう本が増えるべき!

 ちなみに、『私にはラスト2つの章=「第7章 民主的な学びのコミュニティーをつくり続けるために」と「第8章 あなたは、「誰と話している」と思っていますか?」がいちばん響きました』と続きます。http://ikubodaisuke.blog.fc2.com/blog-entry-13.html

 以上は、いま一緒に「科学者の時間」に取り組んでいる井久保先生の「読書記録」からでした。

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