2015年6月28日日曜日

探究の科学とリテラシー


The Essentials of Science and Literacy
   
 この1か月間、大学の同僚と表記の本をテーマに読書会を行いました。

Karen Worth他・Heinemann2009で、著者たちはEducation Development Center, Incというところに所属している人たちです。

 この本の最後の「Conclusion」に次のように書いてあります。(同書p.92)
   
 探究をベースとした科学は、生徒のライティングに本物の内容を提供してくれます。探究活動を行って集めたデータを利用して、ライティングプログラムで教えられたやり方をもとにしてノートに記録をしたりするときに、生徒はそのプロセスと内容についてオーナーシップを感じることができるのです。
    生徒は直接行った探究活動について書くとき、その分野や、読者、どんな情報をそこに含めるか、そしてどのようにして自分の考えを述べるのかについての選択権をもつことができるのです。同時に、それによって、彼らは科学の知識や書き手としてのスキルを高めることができるのです。

 
 学ぶ対象が「本物の内容」であるということがまず重要です。教科書に書いてあることをカバーすることが主なのではなく、探究を基礎とした学習活動のなかで、本物の科学者と同じように学んでいく点が何よりも魅力的です。ですから、ノートの記入も自分が見出だした主張を裏付けるようなデータをきちんと記録しておく、サイエンスノートブックなのです。

 そして、科学の知識を深めると同時に、「書き手としてのスキルを高める」という点も良い点です。このようなやり方こそ、「言語活動と各教科の連携」です。

 また、この本の第1章には探究学習のサイクルとして次のような図が紹介されています。

 この頭のところにある「Engage」は、このブログのパートナーに教えてもらったことなのですが、「夢中になって取り組む」というイメージが最もよい訳語だと思います。子どもたちが「夢中になって取り組む」ような学習が、多くの教室で展開されるように、この考え方が理解されていくとよいと思います。

2015年6月21日日曜日

知識社会の学校と教師


先週ここで紹介された「知識社会の学校と教師」を引き続き、話題にしたいと思います。

パートナーの指摘にもありましたが、訳文の読みにくさはかなりのものですが、それでも読む価値はある本です。

 1章の「知識社会の発展」の項では、こんな文章があります。

 
「教育は労働者にとって鍵となる資質である。つまり、情報化された資本主義における新たな生産者とは、企業や国と地域の経済に最も価値ある貢献をもたらす知識の生成者たちであり情報処理の担い手なのである。」

    ICT教育もわが国の学校教育の現下の課題の一つですが、まさに世界共通の大きな課題でもあります。この文章の後に、シンガポールのこの方面での先進的な様子が語られていますが、この点でもわが国はかなり遅れを取っているようです。(もっとも国のサイズということも関係しているとは思いますが)

  2章の「知識社会を乗り越える学校と教師」では、次のような箇所があります。

 
「知識経済の学校と教師は、標準テストの成績や、他者が描いたカリキュラムをただ単に実践するよりも、より高度なスキルと判断を必要とする。」
   
 まさに教師とは、「高度なスキルと判断」が必要とされる職業だと思います。専門職と呼ばれる所以です。「学び続けること」の大切さが求められる理由でもあります。

 この文のすぐ前に「知識経済を乗り越える学校と教師」には、次のものが必要だと書かれています。
   
 ・人格

 ・コミュニティ 

 ・安心

 ・包摂

 ・誠実さ

 ・地球市民としての自覚

 ・思いやり

 ・民主主義

 ・人間性と専門性の成熟

 
 このどれもが大切な項目でしょう。「誠実さ」「思いやり」はこの本でも紹介されているダニエル・ゴールマンのEQにも通じるものです。また、「研修」などでは養っていくことが難しいものでもあります。

 最後の「人間性と専門性の成熟」は、やはり、所属している学校を中心とした「学びの共同体」で、日々の協働を媒介として養われていくものでしょう。
 

2015年6月14日日曜日

『知識社会の学校と教師』

この本(アンディ・ハーグリーブス著)を紹介すべきか否か、かなり迷いました。
2013年6月2日号で紹介した本と、基本的にはまったく同じ理由からです。

でも、訳した人たちの「想い」を汲み取って、紹介することにしました。

●いい点
1)    「知識経済に備える学校と教師は次の要素を促進させ、成長させるものである」として、以下の8点がリストアップされています。(59~60ページ)
  ・創造性
  ・柔軟性
  ・問題解決
  ・独創性
  ・集合的な知性
  ・専門職の信頼
  ・リスクへの覚悟
  ・持続的改善   ~ あなた(ないし学校)は、これらのどれだけを満たせていますか?

2)「知識経済を乗り越える学校と教師は、以下のものを養う」として、以下の9点がリストアップされています。(109ページ)
  ・人格
  ・コミュニティ
  ・安心
  ・包摂     ~ なんと捉えたらいいのでしょうか?
  ・誠実さ
  ・地球市民としての自覚
  ・思いやり
  ・民主主義
  ・人間性と専門性の成熟  ~ あなた(ないし学校)は、どれだけを満たせていますか?

3)この本のまとめ(?)の表 (126ページ)



  ~ 現状は、一番右側のようです。
    それに対して、求められているのは左側の2つ(だと思います)。

4)この表も左側が求められているのですが、現状は右側になっています(273ページ)

 ~ セクトがなんなのかは、よくわかりません!★
    「知識の転換」 ~ なんのことかわかりますか?

 これら4つのいい点からだけでも、学校と教師が何を求められているか、明らかな気がします。
(実際に、読まれた方ないし、もし訳者でこのサイトを見た方がいたら、ぜひ追加・修正をお願いします。)

●悪い点/改善を要する点
1)訳が滑らかではないので、ほとんど上で紹介したリストと表しか目を通せませんでした。たとえば、一例を紹介すると(54~55ページ)・・・


 ~ かなり重要なことのオンパレードなのですが、スーと理解できますか?
   「やってみよう!」「取り組んでみたい!」と思えますか?

2)    値段が高すぎます。なんと、4800円+税です。(私も、図書館の助けで読ませてもらいました。★★とても、買いたいと思える値段ではありませんから。)いったい誰を対象に設定しているのでしょうか?


★ 「パフォーマンス-トレーニング」すら、しっかりやられていない状況だと思います。
 やった振りをしてごまかしているというか。

★★ タイトルに惹かれて、読みたくなりました。でも、本の中のどこかで、著者自身が「学習社会」の方が正しい、というように書いていた記憶があります。

2015年6月13日土曜日

ベスト・コーチングの再放送



今日の2時から(サッカー)と3時から(テニス)、両方の再放送があります。
http://projectbetterschool.blogspot.jp/2015/05/blog-post_17.html
見逃した方は、ぜひ見て(録画して)ください!
そして、ぜひ感想をお聞かせください。

2015年6月7日日曜日

歩く広告塔としてのリーダー



  「彼は生徒であれ教師であれ、彼の姿を目にする人の数が多ければ多いほど、学校の運営はより円滑になると確信している」(『ボイドン校長物語』ジョン・マクフィー著、89~90ページ)
 この短い本(全部で112ページ)には、他にも引用に値する箇所や、感銘を受ける箇所が結構あるので、ぜひご一読を。(ページ数に見合う値段ではないので、私は図書館で借りて読みました。)

一人の校長の視点でなく、たくさんの校長の経験から導き出したのが先週の書き込みにも登場した『校長先生という仕事』ですが、上の内容と関連することにも言及しています。以下の142~144ページのコピーを参照してください。

 「学校の中での校長の役割」(表3-2を含めて?)は、「教室の中での教師の役割」にそのまま置き換えることができるものの多いことにも驚きます。他人事として片付けるのではなく、ぜひこの視点でも読んでください。